口コミは「事実」だけではなく、「感情」で書かれます
私は、多くの口コミを分析する中で、一つの共通点を感じています。
それは、患者様は出来事そのものよりも、そのときに抱いた感情を口コミに書いているということです。
例えば、30分待ったという事実があったとします。
ある患者様は、「人気の医院だから仕方がない」と受け止めるかもしれません。
一方で、別の患者様は、「予約した意味がない」「時間を大切にしてもらえなかった」と感じるかもしれません。
同じ30分という事実でも、口コミの内容はまったく違うものになります。
この違いを生み出しているのは、待ち時間ではなく、その間に患者様が感じた感情です。
受付で「申し訳ありません。診療が長引いております」と一言説明があったのか。
あとどれくらい待つのかが分かったのか。
スタッフが気に掛けてくれていると感じられたのか。
こうした小さな積み重ねが、不満を安心へと変えることがあります。
つまり、悪い口コミを防ぐためには、出来事だけを改善するのではなく、その出来事によって患者様がどのような感情を抱くのかまで考えることが大切です。
「正しい対応」と「伝わる対応」は同じではありません
医療現場では、医学的に正しい判断をしなければなりません。
これは当然のことです。
しかし、医学的に正しいことが、そのまま患者様の安心につながるとは限りません。
例えば、医学的には必要のない検査を行わないという判断は正しいかもしれません。
しかし、その理由が十分に説明されなければ、患者様は「ちゃんと診てもらえなかった」と感じてしまうことがあります。
反対に、検査を行う理由だけでなく、「なぜ今回は必要ないと判断したのか」を丁寧に説明すれば、患者様は納得してくださることも少なくありません。
私は、医療には「正しいことを行う責任」と「その理由を分かりやすく伝える責任」の両方があると思っています。
どちらか一方だけでは、本当の意味で患者様の安心にはつながりません。
信頼は説明によって育ちます
患者様は、すべての医療技術を理解することはできません。
だからこそ、信頼を築くためには説明が重要になります。
説明とは、知識を伝えることではありません。
患者様の不安を減らすことです。
専門用語を並べることではありません。
相手の立場に立って、「この方は何が分からないのだろう」と考えながらお話しすることです。
その姿勢は必ず伝わります。
患者様は、「難しい話を理解できた」ことよりも、「自分のために時間を使って説明してくれた」と感じたことを覚えているものです。
だから私は、説明は医療サービスの付属ではなく、医療そのものの一部だと考えています。
最後に残るのは「人」の印象です
数年後、患者様が治療内容を細かく覚えていることは少ないかもしれません。
しかし、「安心して相談できた先生だった」「受付の方が優しく声を掛けてくれた」「不安な気持ちを理解してくれた」という印象は、長く記憶に残ります。
そして、その印象が、「また通いたい」「家族にも紹介したい」という気持ちにつながります。
医療は人が行う仕事です。
だからこそ、最後に評価されるのも、人なのだと思っています。
設備や技術はもちろん重要です。
しかし、それらの価値を患者様に届けるのは、そこで働く一人ひとりの姿勢です。
私は、悪い口コミが生まれにくい医療機関とは、人を大切にする文化が根付いている医療機関だと考えています。
患者様を大切にする。
スタッフを大切にする。
そして、誠実であり続ける。
その積み重ねはすぐに結果が出るものではありません。
しかし、時間をかけて育てた信頼は簡単には失われません。
だからこそ、私たちは目先の口コミではなく、その先にある信頼を育てるお手伝いをしていきたいと思っています。


