悪い口コミが投稿される前には、必ず「前兆」があります
私は、悪い口コミは突然投稿されるものではないと思っています。
もちろん、予期せぬトラブルが発生することはあります。
しかし、多くのケースでは、その前に何らかの「前兆」があります。
その前兆に気付き、適切に対応できていれば、口コミには発展しなかったかもしれない事例を数多く見てきました。
例えば、診察中に患者様の表情が曇っていたにもかかわらず、そのまま診療が終わってしまったケースがあります。
説明はしたつもりでも、患者様は十分に理解できていなかったのかもしれません。
質問したそうな様子だったにもかかわらず、「他に質問はありませんか」という一言がなかったのかもしれません。
あるいは、受付で少し不満そうな様子を見せていたにもかかわらず、忙しさのあまり誰も気付かなかったということもあります。
患者様は、不満を感じた瞬間に口コミを書くわけではありません。
多くの場合、「仕方がない」と一度は気持ちを整理しようとします。
それでも納得できないときに、初めて口コミという行動につながるのです。
だからこそ、その途中で患者様の気持ちに寄り添うことができれば、結果は大きく変わる可能性があります。
不満を言ってくださる患者様を大切にする
私は、不満を直接伝えてくださる患者様は、とても貴重な存在だと思っています。
時には厳しいご意見もあるでしょう。
耳の痛い内容もあるかもしれません。
しかし、その方は医療機関に改善してほしいという思いがあるからこそ、時間をかけて伝えてくださっています。
本当に怖いのは、何も言わずに離れてしまう患者様です。
何も言わずに通院をやめ、その後に口コミだけが投稿される。
このようなケースは決して少なくありません。
だからこそ、院内でご意見をいただける環境を整えることは、とても重要です。
「お気付きの点がありましたら、お聞かせください。」
その一言があるだけでも、患者様は「この医院は話を聞いてくれる」と感じやすくなります。
ご意見箱を設置することも一つの方法ですし、診療後のアンケートを活用することも有効です。
大切なのは、患者様の声が口コミサイトではなく、まず医療機関に届く仕組みをつくることです。
クレーム対応は、信頼を取り戻す最後の機会です
どれだけ努力をしていても、すべての患者様にご満足いただくことは簡単ではありません。
時にはクレームになることもあります。
そのときに重要なのは、「誰が悪いのか」を決めることではありません。
まずは患者様のお話を最後まで伺い、何に不安や不満を感じられたのかを理解することです。
途中で反論したり、言い訳をしたりすると、「話を聞いてもらえなかった」という印象だけが残ってしまいます。
もちろん、事実と異なる内容については、冷静に説明する必要があります。
しかし、その前に「ご不快な思いをさせてしまったこと」に対して誠実に向き合う姿勢があれば、患者様の受け止め方は大きく変わることがあります。
クレーム対応は、失われた信頼を取り戻す最後の機会でもあります。
だからこそ、場当たり的な対応ではなく、組織として対応方針を共有しておくことが重要です。
信頼される医療機関は、失敗しない医療機関ではありません
私は、長年多くの医療機関を見てきて、一つ確信していることがあります。
信頼される医療機関とは、失敗や問題がまったく起きない医療機関ではありません。
問題が起きたときに、その事実から目を背けず、原因を振り返り、改善につなげることができる医療機関です。
医療は人が行うものです。
だからこそ、予期しない出来事が起こることもあります。
大切なのは、その経験を次に生かすことです。
一つのご意見から学び、仕組みを見直し、スタッフ全員で共有する。
その積み重ねが、患者様にとってより安心できる医療環境をつくり、働くスタッフにとっても誇りを持てる職場につながっていきます。
私は、悪い口コミを「避けるべきもの」とだけ考えるのではなく、「改善のきっかけを与えてくれるもの」という視点も持つことが大切だと思っています。
もちろん、事実に反する投稿や悪意のある口コミには適切な対応が必要です。
しかし、多くの口コミには、医療機関がより良くなるためのヒントが隠されています。
そのヒントを見逃さず、一つずつ改善を積み重ねることが、結果として悪い口コミが生まれにくい医療機関への近道になるのではないでしょうか。


